Solidworksという三次元CADがあります。かなりシェアは高いみたいです。ですが私はそんなに好きではないです。三次元で書くのはどうも慣れない。二次元のほうが楽です。
とはいえ、シェアが高いのにはそれなりの理由があります。このソフトは部品に荷重をかけた時の変形を計算してくれるのです。あと流体の解析とかしてくれるらしいですが使ったことない。
そんなSolidworks、うちの学校で教育版を100アカウント持っているので学生が卒研やらなんやらで使えます。普通に買うとたしか百万円弱くらい。
そこでこのブログの放置ぶりがひどいということと現在卒研ですることがないという二つの理由から、「Solidworksでニブのモデル作ってたわみ解析しようぜ!」と思い立ちました。
で、どーん。
正直あまりSolidworksに慣れていないので、このモデル作るのに散々手間取った挙句にエラ部分がなんか変。一応モデルはパイロット15号です。お遊びですしそこまで凝るつもりもありません。だいたいそれっぽいので変な部分はまあ置いといて、このまま進めます。
条件は以下のとおりです。
筆記角度40度
荷重30g ≒ 0.3N
いずれも私が書くときの大まかな値です。
で、ばーん。
おお、ペン先開く開く。画像は誇張されてるみたいです。色の変化は変位です。
固定部と弾力部の違いが如実に現れていますね。根元の変化はほぼゼロであることがわかるので、ニブが首軸に押し込まれている量が大きくても柔らかさへの影響はほぼないことが読み取れます。
変位は二つの材料で調べました。14金のヤング率は調べても見つからなかったので、次の式で 大体の値を計算。
E = ΣEi*pi
Ei:各金属のヤング率
pi:各金属の含有率
参考
http://www2.tokai.or.jp/kenwest/Jchisiki/noblmtl1.htm
http://www.fintech.co.jp/etc-data/kinzoku-data.htm
各金属の割合は上の14金(淡い黄色)から計算しました。明らかに正しい値が出ない式ですが、純金そのままよりは幾許かマシでしょう。計算したら87GPaでした。
それでシミュレーション実行してみたらこんな値です。
14金(87GPa) 0.14918mm
純金(78GPa) 0.16639mm
さて、この二つの材料で違う部分はヤング率です。たわみはヤング率に反比例するので、ヤング率とたわみでそれぞれ比をとってみましょう。
87/78 = 1.11538
0.16639/0.14918 = 1.11536
ほぼ一緒。やはりたわみ量はヤング率に反比例しているということがわかります。
私は常々この材質はこんな書き味、あの材質ならあんな書き味、という理論が気に食わなくて仕方ありませんでした。材質によって書き味が変わるものか、と。確かにこの結果のようにヤング率によってたわみは変化しますが、そんなものはニブ形状による違いに比べれば些細なものです。(さすがにステンレスの195GPaと金では違いも大きいですが。)
人間の触覚がいかに優れていると言っても、ニブが直接触れているのは紙だけです。確かに材質によって柔らかさは変化しますが、それもニブ形状の因子のほうが大きいものです。私には「材質固有の書き味」なんてものは信じられません。完全否定はしませんが。
次はニブ形状による変化です。今回は新しいものたくさん作るのも面倒でしたし、厚みを半分にしたものだけを作りました。ちょっとパラメータを間違えたかもしれないので純粋に厚み半分だけではないかも。大体一緒ですが。
画像の変化量はある割合で拡大されており、元々の変化量が大きければその拡大率は小さくなるようです。つまり上と見比べても画像上での違いは殆ど無いはずです。
結果は以下。
14金(87GPa) 0.73106mm
半分にする前との比は4.9倍でした。単純な板とは違い、シンプルに8倍になるというわけではないですね。
当然ながら、元と半分にしたもので変化している部分に違いは見て取れません。薄くすればしただけ変形する部位は変わらずに柔らかくなります。変形の仕方が変わるわけではありませんから、厚みによる変化は柔らかさの変化だけです。
何が言いたいかというと、twitterで再三再四言っているように「腰がない」などという評価はないということです。こちらは完全否定します。
よく柔らかすぎるニブは「腰がない」と呼ばれます。しかし確実な評価としてあるのは柔らかさの度合いだけで、腰のあるなしは個人的な感想です。自分の好みの柔らかさを越えたふにゃふにゃニブを腰がないと呼んでいるに過ぎません。それをあたかも「柔らかさ」とは別次元の評価とでも言いたげに「腰」を持ち出すのはどう考えたっておかしいのです。世の万年筆愛好家の方には「腰がない」という表現は評価ではなく個人的感想であることを重々理解し、これから新しい万年筆を購入したいと考えている方は感想にすぎない「腰がない」という記述に騙されることがないようにしてほしいものです。
自分の筆圧での大体の変形を知りたければ、30で割って自分の筆圧[g]をかけてくだい。
それにしてもSolidworksはすごいですね。個人用PCでこんな変形のシミュレーションや応力解析までできてしまうわけですから。これをタダで使わせてくれる学校はやっぱりいいものなのですね。
とはいえ、シェアが高いのにはそれなりの理由があります。このソフトは部品に荷重をかけた時の変形を計算してくれるのです。あと流体の解析とかしてくれるらしいですが使ったことない。
そんなSolidworks、うちの学校で教育版を100アカウント持っているので学生が卒研やらなんやらで使えます。普通に買うとたしか百万円弱くらい。
そこでこのブログの放置ぶりがひどいということと現在卒研ですることがないという二つの理由から、「Solidworksでニブのモデル作ってたわみ解析しようぜ!」と思い立ちました。
で、どーん。
正直あまりSolidworksに慣れていないので、このモデル作るのに散々手間取った挙句にエラ部分がなんか変。一応モデルはパイロット15号です。お遊びですしそこまで凝るつもりもありません。だいたいそれっぽいので変な部分はまあ置いといて、このまま進めます。
条件は以下のとおりです。
筆記角度40度
荷重30g ≒ 0.3N
いずれも私が書くときの大まかな値です。
で、ばーん。
おお、ペン先開く開く。画像は誇張されてるみたいです。色の変化は変位です。
固定部と弾力部の違いが如実に現れていますね。根元の変化はほぼゼロであることがわかるので、ニブが首軸に押し込まれている量が大きくても柔らかさへの影響はほぼないことが読み取れます。
変位は二つの材料で調べました。14金のヤング率は調べても見つからなかったので、次の式で 大体の値を計算。
E = ΣEi*pi
Ei:各金属のヤング率
pi:各金属の含有率
参考
http://www2.tokai.or.jp/kenwest/Jchisiki/noblmtl1.htm
http://www.fintech.co.jp/etc-data/kinzoku-data.htm
各金属の割合は上の14金(淡い黄色)から計算しました。明らかに正しい値が出ない式ですが、純金そのままよりは幾許かマシでしょう。計算したら87GPaでした。
それでシミュレーション実行してみたらこんな値です。
14金(87GPa) 0.14918mm
純金(78GPa) 0.16639mm
さて、この二つの材料で違う部分はヤング率です。たわみはヤング率に反比例するので、ヤング率とたわみでそれぞれ比をとってみましょう。
87/78 = 1.11538
0.16639/0.14918 = 1.11536
ほぼ一緒。やはりたわみ量はヤング率に反比例しているということがわかります。
私は常々この材質はこんな書き味、あの材質ならあんな書き味、という理論が気に食わなくて仕方ありませんでした。材質によって書き味が変わるものか、と。確かにこの結果のようにヤング率によってたわみは変化しますが、そんなものはニブ形状による違いに比べれば些細なものです。(さすがにステンレスの195GPaと金では違いも大きいですが。)
人間の触覚がいかに優れていると言っても、ニブが直接触れているのは紙だけです。確かに材質によって柔らかさは変化しますが、それもニブ形状の因子のほうが大きいものです。私には「材質固有の書き味」なんてものは信じられません。完全否定はしませんが。
次はニブ形状による変化です。今回は新しいものたくさん作るのも面倒でしたし、厚みを半分にしたものだけを作りました。ちょっとパラメータを間違えたかもしれないので純粋に厚み半分だけではないかも。大体一緒ですが。
画像の変化量はある割合で拡大されており、元々の変化量が大きければその拡大率は小さくなるようです。つまり上と見比べても画像上での違いは殆ど無いはずです。
結果は以下。
14金(87GPa) 0.73106mm
半分にする前との比は4.9倍でした。単純な板とは違い、シンプルに8倍になるというわけではないですね。
当然ながら、元と半分にしたもので変化している部分に違いは見て取れません。薄くすればしただけ変形する部位は変わらずに柔らかくなります。変形の仕方が変わるわけではありませんから、厚みによる変化は柔らかさの変化だけです。
何が言いたいかというと、twitterで再三再四言っているように「腰がない」などという評価はないということです。こちらは完全否定します。
よく柔らかすぎるニブは「腰がない」と呼ばれます。しかし確実な評価としてあるのは柔らかさの度合いだけで、腰のあるなしは個人的な感想です。自分の好みの柔らかさを越えたふにゃふにゃニブを腰がないと呼んでいるに過ぎません。それをあたかも「柔らかさ」とは別次元の評価とでも言いたげに「腰」を持ち出すのはどう考えたっておかしいのです。世の万年筆愛好家の方には「腰がない」という表現は評価ではなく個人的感想であることを重々理解し、これから新しい万年筆を購入したいと考えている方は感想にすぎない「腰がない」という記述に騙されることがないようにしてほしいものです。
自分の筆圧での大体の変形を知りたければ、30で割って自分の筆圧[g]をかけてくだい。
それにしてもSolidworksはすごいですね。個人用PCでこんな変形のシミュレーションや応力解析までできてしまうわけですから。これをタダで使わせてくれる学校はやっぱりいいものなのですね。
Solidworksの凄さも然ることながら、着目点が面白いですね。他では読めない記事にいつも興味深く拝見しております。
返信削除厚み半減でたわみ4.9倍は面白いですね。平板と各種ニブ形状で厚みの寄与率を調べてみると構造と変形に相関が見いだせたりするのでしょうか。
題材と得られた結果はピカ一ですね。ただ、「やはりたわみ量はヤング率に反比例しているということがわかります。」→「私は常々~」の部分など、論旨展開に解り難さを感じました。
書き方を改めれば、主張が伝わりやすく、また説得力が増すのではないかと思った次第です。
以下(勝手な)提言です。
--
最初に「たゆみ」の定義を書く。(非工学系を読者として意識するなら書いた方が解りやすい。)
「書き心地は主にたゆみによる」、あるいは、「今回はたゆみに着目して試験した」旨を書く。
論点2つは分離して(別段落にして)試験・考察
1) たわみ量に寄与する因子は何か
2) 腰がないという表現の是非
1)については、よく使われている素材・ニブ形状を各々3-6条件拾ってシミュレーションし、ニブ形状の寄与が支配的であることを示す。
2)については、申し訳ありません、私には論理の流れがよくわかりませんでした。「腰のあるなし」が主観に基づく表現と言うことは解ります。が、「柔らかさ」もまた主観による表現ではないでしょうか。私なら「柔らかさの指標となるパラメータを設定し、製品比較の指標に供するべき」と主張します。
--
りぃ様が今後もよき記事を更新されますことをお祈りして、失礼します。
>sakiさん
返信削除コメントありがとうございます。
論旨展開の稚拙さについては一言もありません。お恥ずかしい限りです。
いくつかご指摘の部分に答えようと思います。
・たわみの定義
ペンポイント部分の上下方向への変位という意味合いで使用していました。
・書き心地の因子としてのたわみの立ち位置
私は書き心地を構成する要素として「柔らかさ」は世間でいうほど大きいウェイトを占めているとは考えていません。書き心地の要素は大きい物で三つ、「ペンポイントの滑らかさ(研ぎ)」「インクフロー」「柔らかさ」だと思っています。
今回はこの三つの中の一つについて検討したに過ぎず、これをもって書き心地がどう、と言うつもりはありません。
「たわみに着目した」という点はその通りです。説明不足でした。
1)因子が何か
素材による変化については、14金と純金での比較で柔らかさについてはヤング率ただ一点のみが影響することが判明したと判断しました。よってそれ以外の素材について検討することは無意味と考え、二つの比較だけとしました。
ニブ形状については、すみません、モデル作るのが面倒でした。
2)「柔らかさ」について
この言葉もしっかりと定義していませんでした。これも私の手落ちです。
私がここで使った「柔らかさ」とはペン先への荷重と変位の比、比例定数、つまりペン先先端におけるバネ定数の逆数です。
例えば厚み普通14金での「柔らかさ」は
0.14918 / 0.3 = 0.497 [mm/N]
厚み半分のペン先では
0.73106 / 0.3 = 2.437 [mm/N]
このように定義した「柔らかさ」は主観的なものではなく、客観的に評価可能な数字となります。
以上です。様々なご指摘ありがとうございました。