2012/06/30
Aurora Mar Tirreno
パイロットもペリカンも、いきなり高いところに手を出して……そしてまたやってしまいました。アウロラの初万年筆、マーレ・ティレニアです。
私は緑が好きです。そして重いペンが好み。アウロラはいつか手を出そうと決めていたメーカーですが、候補のオプティマは軽い! そこだけがネックでした。あと緑にシルバートリムがないのも残念なポイント。
……なーんてことを考えていたら、四つの海シリーズの二つ目がこれです。オプティマよりも好みな色合いの、綺麗なエメラルドグリーン。スターリングシルバー。そして重い。
よーく考えました。いろいろ考えました。でも、どうしても買わない理由が見つからなかったのです。あとはひたすら答えの決まった自問自答。そしてつつがなく購入の流れです。
まあ立派な箱。置き場所に困っちゃうわ。これ88ブラックの使い回しなんじゃ? 裏に起毛した素材が貼られていて滑りにくくなってます。
箱を開けてみるとペン一本とインクの小瓶が鎮座ましましておりました。
インク小瓶は紙のパッケージと紐が封蝋で留められていました。写真撮る前に剥がしちゃいましたが。剥がしたら紙の残骸が……。これは酷い。
このインクは黒でした。黒インクを最後に使ったのは何年前だろう……。黒インクのボトルはクインクしか持っていませんし、そのクインクもキャップが固着して開かずに困っています。いや、黒インクは全く使わないので開かなくても別に困っていませんね。私の黒インクに対する興味というのはその程度です。このボトルも開かずのボトルになっちゃうのでしょうか。
第一印象は短い。そして手にとってまず思ったことは重い。かなりなフロントヘビーです。首軸がスターリングシルバーなので当然ですね。キャップをした状態での重心はちょうどキャップリング上端くらいの位置です。
キャップを後ろに差して筆記状態とすると、たいしてフロントヘビーには感じませんでした。そもそも私はペンの重心に無頓着なので、異常な重心バランスでないと違和感を覚えません。
筆記状態ではキャップがちょっとカタカタ言います。勝手に外れる程のものではないので、あまり気にしないこととしましょう。
そして外見でまず驚いたことが一つ。スターリングシルバーの首軸に切られたネジに違和感……。ルーペで覗いてみるとなんとこのネジ、台形ネジではないですか!
台形ネジといえば摩擦低減のために用いられる事が殆どです。30°台形ネジならば一般的な三角ネジと比較してその摩擦はcos30°/cos15°倍、つまり9割弱になります。三角ネジに比して加工が面倒で自動調心効果が小さくなるデメリットはありますが。
しかし万年筆のキャップに台形ネジを使う意図とは……? 関係がありそうなのは加工が面倒という点くらいでしょう。摩擦が小さくなるという点も、こと万年筆のキャップという用途ではデメリットと言えます。キャップが外れやすくなるだけです。高級感出したかったのですかね?
オプティマも台形ネジになっているのでしょうか。ネットの写真では判別がつきません。こんなところ注目する人もそうそういませんし。
ネジは二条ネジで、約一回転半で外れます。
さて、その他の外観です。まずは軸に使われているアウロロイド。
この緑色はかなり好みです。この柄はモザイク柄と言っていいのでしょうか。平面的な柄だけでなく、奥行き方向にも変化のある三次元的な広がりを持っています。
似たような樹脂で、以前購入したレターナイフがあります。この持ち手も奥行きのある綺麗なマーブル模様です。二つを並べて比較してみると、双方甲乙つけがたい美しさです。奥行き感ではレターナイフに軍配かな。
金属部分は前述のとおり、スターリングシルバーが使われています。天冠リング部にちっちゃく925と刻印がされております。その横にはこれまたちっちゃーく「☆S TO」の文字が。ルーペで見てようやく判別出来る大きさです。「☆S」はスターリングシルバーの意でしょうが、「TO」はなんでしょう? もしかしたら「T0」なのかもしれません。どのみち意味は不明です。
天冠リング、キャップリング、尻軸リングの各所には刻印がされています。火山がどうの、ヌラーゲがどうの。そんなに興味ありません。説明書の裏に四つの海のモチーフが描かれています。上から二番目がマーレ・ティレニアです。刻印はリグリアのイルカの方が好きかなぁ。キャップリングにはシリアル番号も入っています。分母がありませんが、480本限定のようです。
85周年レッドとは違い、尻軸先端には何の刻印もなくツルツルです。天冠も樹脂ではなく金属になっています。
そして何より、私が一番気に入っているのが首軸もスターリングシルバー製であるということです。首軸が金属で作られた万年筆は少ないです。それが理由かはわかりませんが、こういう仕様は高級感を感じませんか?
クリップはアウロラ独特の形状です。この形、丸いところは金属球が溶接もしくはろう付けされているのかと思っていたのですが、板からの成型品なのですね。上から見ると隙間が、斜め下から見ると板の継ぎ目が見えます。クリップのバネは823なみに強いです。
クリップの根本ですが、天冠との間に隙間があります。ちょっと残念。天冠とクリップの角度も微妙にずれていますね。
スターリングシルバー含め、銀製品というものを初めて持ちます。最も硫化しにくいスターリングシルバーでも、やはり硫化は進むようです。燻銀とその変化の過程を楽しみにしています。
キャップの内側を見てみます。メネジはオプティマ同様、樹脂に直接切られています。オプティマでは強いトルクでキャップを閉めるとこのメネジが壊れてしまうという症例があるようです。ちょっと不安なので、キャップを閉めるときには軽く締めることを意識しましょう。
びっくりしたのがインナーキャップがないこと。調べてみると、アウロラにはもともとインナーキャップはないんですね。気密性は大丈夫なのでしょうか。
吸入式ならば気密性を調べる手っ取り早い方法があります。それはキャップをしたままピストンを下げること。抵抗を感じるならば気密性は高く、さしたる抵抗もなくピストンが下がるならば気密性は期待できません。まあ、もうインク入れちゃったのでやりませんけど。
インク窓はとても見やすいです。M1000のインク窓と比較すると雲泥の差。インク窓の中央に見える棒はペン芯の先端のようです。これ、見えるのが嫌いな人もいそうですが。
棚吊りは皆無です。やっぱり吸入式は素晴らしい!
ピストンを下げると、アウロラ独特のリザーブタンクが見て取れます。これ、明らかにリザーブタンクが無いほうがインクはたくさん入りますよね。なんとなく、ピストンを下げたときに飛び出したペン芯に当たらないように保護するのが主目的でリザーブタンクはおまけなんじゃないかと勘ぐってしまいます。
ペン先は18KのBです。アウロラの通常品は14Kで、こうした限定品だけ18Kになっているようですね。パイロットみたい。
正直、アウロラのニブの刻印はそんなに好きじゃありません。限定品なんだからもうちょっと凝ってくれても良かったのに。
ペン先はさすがアウロラ、典型的な丸研ぎです。段差なし、腹開きはないけど背開きもなし、切り割りは最初から実に調度良いくらいのクリアランスを持っています。M1000は切り割りの内側が摩耗するのが嫌で早々に調整してしまいましたが、このペンは右ねじりの癖を持つ私でも最低限の筆記には一切の調整が不要ですね。ただ、インクのせいかもしれないのですがほんの少し書き出し掠れがあります。
アウロラのペン芯はエボナイト製らしいですね。エボナイト製だというだけでセーラーやパイロットのペン芯のような性能を得られるわけでもないですし、ペン体にエボ焼けを生じさせるということであまりいい印象を持っていないです。ペン芯にはペン先の太さが印刷されています。
このペン芯は完全な円筒形で、ペン体のはまる箇所に凹みを設けてはいないそうです。おかげでペン芯ズレの起きやすいこと。最初に少しペン芯の中心と切り割りがあっていないなと思って、手でクイッとペン体を押してみたらすぐにズレました。
肝心の書き味です。アウロラはペン先を自社製造しており、サリサリの書き味と言われています。しかし、私の買ったペンは筆記音はしますが特別サリサリといった感触かというと、そんなことはありません。Bだからでしょうか。
このペンの書き味は一言で言うと「つまらない」です。ペン先はこれぞガチニブと自信を持って言える硬さ。研ぎは綺麗な丸研ぎで右ねじりでも素直にインクが出てくれますし、どんな角度でも一切の不快感は感じず、そのかわりぞくぞくするようななめらかな書き味もありません。趣味としては今一歩、実用品としては非の打ち所がありません。
全体的に褒めているのか貶しているのか判然としないレビューになりましたが、私はとても満足しています。これからどんどん使っていき、銀の硫化を楽しんでいきたいです。
2012/06/23
S.T.Dupont Royal Blue
デュポンのロイブル、瓶に惹かれて購入。
M1000に月夜を入れていたのですが、なんだか日に日に嫌になってきました。なぜか月夜の色が耐えられない! 暗く、緑の混じった青というものがだんだんドブのような色に思えてきて、見ていると鬱々としてきたのです。「月夜」をドブの色とは失礼な物言いですが、その時はそうとしか思えなくなっていました。特に薄く出た部分が嫌。ファーストインプレッションは嘘をつかない。
この色を見ていると緑混じりの暗い青ではなく、夏の澄んだ青空のような清々しい青が欲しくなってきました。それもあんまり薄くない色で。そうだ、ロイヤルブルーを買おう。
一時期はこんな明るい色を自分が欲するとは露程も思っていませんでした。好みとは変わるものなのですねぇ。
ロイヤルブルーなんてどこのものを買っても大差ないだろう、なんて意識があります。そしてデュポンの瓶が実に良い形! デュポンは黒とロイブル、そしてなぜかパープルの三色しかラインナップがありません。なんでよりによってパープルなんだ……という話はさておいて、黒インクに全く興味がなく、既にペリカンのバイオレットを持っている私はロイヤルブルーしか選択肢がありません。この機にデュポンの瓶を買わなければ、後は興味のない色か重複になってしまう!
と、いうわけでいい機会と思いデュポンのロイブルを購入しました。
前回、月夜で使った色見本が残っていたので再利用。一番上がロイヤルブルーです。
今までBBに傾倒していたので当然なのですが、やはりロイヤルブルーが抜きん出て明るいです。一昔前の私ならば歯牙にも掛けなかったであろう明るさ。
色味は多くのロイヤルブルーに違わず、紫に近い青といったところでしょうか。あんまりロイヤルブルーを使った経験がないので、まともな評価はできないですけどね。比較対象がありませんから。
Premium C.D.は月夜では滲み・抜けが発生していましたが、このインクでは皆無。店頭に置かれていた色見本でも、劣化モレスキンで滲みがありませんでした。滲みの起きにくいインクであると言えるでしょう。
このインク、最初に蓋を開けてあらびっくり。なんとボトルの口にフィルムが貼られていました。ちょうどマヨネーズの口についているアルミ箔を厚手の樹脂フィルムにした感じ。
こんなの初めて見ました。他にもこういうフィルムがついているインクってあるんでしょうか。
購入前にわかっていたことですが、この特異な瓶形状のおかげでひとつの問題点が浮かび上がってきます。即ち、インク吸入がしにくい。
底が浅いためにペン先を満足に浸すことが難しく、M1000の大きなペン先ではペンを斜めに傾けて吸入しなければいけませんでした。
これはボトルインクの本分から考えれば大きな減点です。このボトルから吸入したい人はパイロットかセーラーのペンを使うべきかもしれません。
こんな形状で容量は50 ml。なみなみ入っています。
で、そんなこんなでロイヤルブルーはなかなか気に入りました。M1000の常用インクはこれでいきます。
そこでふと月夜で書いた文字を見ると……あれー? さっきまであんなに気が鬱ぐような色だと思っていたのに、今はなかなかいい色に感じるぞ?
人間の感覚なんて全く信用出来ないなぁ、とつくづく思いました。
しかし、インク置き場がだいぶ圧迫されてきました。近々また一本増やす予定なので、本格的に置き場所を考えたほうがいいかもしれません。改めて画像を見ると、本棚をどうにかするほうが先だとも思いますが。
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2012/6/27 追記
どうも紫っぽいなぁ、と思うこともあれば素直な青に見えることもある……と思っていましたが、謎が解けました。
書いた直後は紫で、乾くと赤みが抜けてすっきりとした青に変化しています。
毎度思いますが、万年筆インクの乾き色変化が不思議でなりません。月夜はどこから緑が出てくるのやら、このロイブルは赤みがどこへいくのやら……。
2012/06/17
C COMPANY repos Pencase
上着を脱ぐ季節、毎度ペンの持ち運びに悩みます。去年はパーカーのペンラップを購入しましたが、使っていると不満点ばかりが出てきまして……。
まず巻き方向の関係でロールペンケースとしては使いにくい。そして巻いた状態からペンを引き抜く使い方ではペンが取り出しにくい。クリップを挟まずにペンを入れていると、ペンケースを逆さにしたときにペンが落ちてくる。その上ペンケースの上下がわかりにくい。ペン全体を保護してくれるわけではない。鞄に入れているとたまに紐が緩んでくる。しっかり巻こうと思うと革にシワがよる。革の質感がいまいち。
去年から常々使いにくくて仕方ないと思っていました。これを買ったのは完全に失敗です。
私の使い方には合わないというだけでこの製品自体がまるでダメ、というわけではありませんよ。念のため。
そこで、今年はもっと使いやすいものを購入しようじゃないかと物色しておりました。
最初は仕切り付きの三本差しを考えていたのですが、選択肢が少ない。二本差しでもまあ良かったのですが、気に入るものとなるとお値段が……。
そこで見つけたのがこのルポ・ペンケースです。前にもどこかで見かけた覚えがありますが、当時はスルーしていました。
本当はダークブラウンが欲しかったのですが、ブラックとターコイズしかなかったのでブラックを買いました。
ペン全体をすっぽりと保護してくれる二つの一本差し。ペンラップには付いていなかった脱落防止フラップ。二つのファスナーペンケース。
万年筆など大事なペンを持ち運びたい、しかしその他の廉価で便利な文具類もなくては困る、といった要望に見事に応えるペンケースです。
一本差しは入るペンのサイズなんて全く考えなくともよいサイズです。M1000と823が片方のポケットに一緒に入ります。149でも余裕でしょう。もちろん、ここに入れるペンが太ければ太いほどファスナーペンケースのほうの容量は圧迫されていきますが。
ペンの長さは考慮しないといけないかもしれません。私は持っていませんが、中屋のシガーロングなんかは入らないんじゃないでしょうか。(ペンの長さについて、下部に追記有り)
クリップを挟んで入れていると、クリップの先端が脱落防止フラップの先からはみ出てしまいます。クリップ先端が保護できません。また、Peek a booのようにクリップを挟む用の薄い革が用意されているわけではないので、クリップをはさむとクリップに負担がかかりますし、革にもよくありません。おまけに前述の通りポケットの容量は非常に大きいので、クリップが入らないといった事態はまず起こりません。ペンの脱落もフラップで防いでくれますし、クリップは挟まない使い方が良いのではないでしょうか。
ペンの取り出しは脱落防止フラップが少々邪魔にはなりますが、巻いたままのペンラップよりは遙かにスムーズな取り出しが出来ます。
また、ペンの使用中はペントレイとして使用することもできます。これがなかなか便利。机の上に直接ペンを置くことに抵抗を感じるので、こうした使い方ができるということは嬉しいです。
ファスナーペンケースのほうは、正直もうちょっとなんとかならんかったのかと思ってしまいます。このペンケースには「マチ」がどこにもありません。故に、こちらの容量は非常に少ない。上にも書きましたが、一本差しに太いペンを差してしまうとこちらが圧迫されてしまいます。
公式で挙げられている容量は「ペン三本」です。M1000を入れた側のファスナーペンケースに一般的なボールペンの太さのペンを三本入れてみると、確かにかなりギリギリですが入るようです。ただ、外見は醜く太ります。常用には二本が限度に思えますね。
二つあるファスナーペンケースのうち、片方はベルトを解かなくても開けられるようになっています。よく使うペンはこちらに入れておくといいでしょう。
私は一本差しにM1000と823、ベルトに邪魔されない方のファスナーにLAMY2000FP、もう片方のファスナーにはなにも入れていません。もともと三本差しを探していたので、これだけで充分です。外見もぶくぶくと太ってはいません。
このペンケース、ファスナー側にマチが付いていないことだけが残念なポイント! ペンを沢山持ち運びたいと考えているならばこのペンケースを選ぶべきではありません。
そのかわり、保護したいペンを三本以上持ち運びたいという場合はいい選択肢でしょう。一本差しに二本差すこともできますし、ファスナーペンケースも一本だけ入れるならばペンをしっかりと保護してくれます。
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2012/6/27 追記
このペンケース、弱点をもう一つ発見しました。
それはずばり、短いペンでは一本差しが使いにくい。大きなポケットが災いして、ペンがすっぽりと入ってしまいます。これは非常に取り出しにくい。
まあ、クリップを使えばなんてことはないのですが。そこまで革が厚いわけではないですし、クリップを差しても問題はないとは思います。
上述の通り、長めのペンならばクリップを差さない使い方を推奨しますが、短いペンでは致し方ないですね。
2012/06/09
Pilot 色彩雫 月夜
BB以外にも選択肢はありました。BBか、青か、濃い緑。結局BBに落ち着いたわけなのですが。私の好みははっきりしてますね。
私の持っている青インク達。
色彩雫 月夜 M1000M
MontBlanc BB 823WA
Pelikan BB プロギアEF
PR Sonic Blue 無印
LAMY BB ガラスペン
Sailor 青墨 ガラスペン
CARAN d'ACHE Caribbean Sea ガラスペン
青墨はフロー過多気味だったため、ガラスペンのインクが切れそうな状態の線を右側に付け足しています。こちらの線が実際に万年筆に入れた時の色味に近いでしょう。
当然、モニタ上の色見本なんて軽い参考程度にしかならないことは承知しておいてください。
追記
色味は、濃く鮮やかな青に緑を加えたような色。BBを期待していたのですが、これは違う。本当にM1000にはこのインクでいいのか、買ってからもしばらく悩んでしまいました。
いわゆる緑変が起こります。緑変で有名なのはWaterman BBや松露ですが、そこまで露骨なものではないと思います。曖昧な書き方なのは、私がWaterman BBも松露も持っていないからです。
そのため、書いた直後は綺麗な青なのですが、乾くと緑色が見えてきます。私がインクを見せた友人は「まさに月夜の色だ!」と言っていました。
また、Waterman BBをよく使っている人には周知の事実であるかと思われますが、緑変の程度は紙によって全く違ってきます。現在メインで使っているノートのPremium C.D.では緑が強めに出て、少々枯れたような色合いを醸し出します。しかしシステム手帳に使っているBindexのホワイト罫ページでは殆ど緑がでてきません。緑変した月夜と比べると、随分と鮮やかな青です。同じインクとは思えません。そのかわり軽い赤光りが起きます。もちろんセーラーのインク程の赤光りは起きません。軽いものです。
当然パイロットのインクなので、滲みや抜けは発生しやすいです。Premium C.D.は1260円もするノートのくせに滲み耐性はダメダメちゃんなので、この組み合わせでは線の輪郭がぼやぼやです。今まで古典BBしか使って来なかったので、ノートの滲み・抜け耐性はあまり考えたことがなかったのですよね。書き味はいいから気に入っているのですが、このインクには向きません。
期待していた色味とは違うインクでしたが、結局面白そうなのでM1000に入れました。
2012/06/03
Pelikan Souverän M1000 M
Pilotの初万年筆は823WA。そしてPelikanの初万年筆がM1000! なんって贅沢な。
このM1000購入、完全に想定外の出来事です。まだ買う気はありませんでした。
それがなぜ今こうして緑縞の軸を愛でているのか。昨今の仕様変更に端を発します。
M1000は、というかスーベレーンは天冠が金属にサテン仕上げのものに変わってきています。樹脂天冠はもうなかなか手にはいらないのではないでしょうか。それは喜ばしい変更です。樹脂よりは金属の方が高級感があってよろしい。
しかし、ニブのPF刻印がなくなってきているというではありませんか! M800以下のものはともかく、M1000のPF刻印は不滅だと思っていました。まさか変更が起きているとは。
では、PF刻印の有無で柔らかさが違うのか? こればかりは調べて分かるものではありません。店頭で試し書きしてきました。
結果、微妙に、ほんの少しだけ違う気がする、という程度の些細な違和感を覚えました。個体差と言われれば納得する程度です。そのとき、私の中に巣食う悪魔が「これは違うぞ、今買わないと確実に後悔する!」と囁いたので購入。単にM1000を買う口実が欲しかっただけであることは言うまでもありません。
と、いうわけでPF刻印つき、金属天冠のM1000が我がペンケースへやって参りました。
まず、M1000といえばそのニブの柔らかさが有名。柔らかいニブといえばM1000というのはもはや定説です。基本です。
さて、実際にM1000を使ってみると、なるほどこれは柔らかい。現行品しか使ったことのない私にはまさに異次元の柔らかさです。しかし、これは柔らかすぎるほど柔らかいかといえば否。現代の総ガチニブ状態からすれば特筆して柔らかいことは事実ですが、万年筆ユーザーの中でも筆圧が低めな人はこれでもまだ満足できないのではないでしょうか。これでも足りないとなれば……浮かぶ選択肢は、オノト……。そこまで出すお金はないので買う予定はありませんが、ヴィンテージに傾倒する人の気持ちも分かります。
などと書きましたが、ふわふわに柔らかいことは変わりません。私にはちょうどいい具合です。無意味に紙の上でペン先をふにふにしたくなります。このくらいの柔らかさのペンが増えるといいのになぁ。
823WAと比較してみると、弾力部の長さはほぼ同じですね。しかし地金の薄さが肉眼でわかるほどM1000のほうが薄いです。これがM1000の柔らかさを生んでいるわけですね。
順番が前後した感もありますが、外観です。
長い間憧れていたせいか、まさに王道の出で立ちに思えます。君主の名を冠しているだけはありますね。
購入したのは緑軸です。M1000は黒と緑しかない、ということを知らずにM800などで緑を買い、M1000購入の段になって後悔している方をちらほらと見かけます。私のようにM1000から買うとそのような事態とは無縁です。
黒軸を購入している人は見たことがありません。
ペリカンの緑縞って、全体が透けているんですね。私はてっきり、黒軸やモンブランのように首軸付近のみが透けているのかと思っていました。吸入機構もうっすらと見えます。うっすらとですが。
しかしここから見えるインクタンクの小さいこと。823の軸全体がインクタンクである外見を見慣れたせいもあって、随分と小さい印象を持ってしまいます。ピストン式の限界やインク噴き出し対策ということは分かるのですが、もう少し大きくても、と思ってしまいます。とは言え、肝心の容量にはさほど不満はありません。まだ一度も使いきってはいないのですが、舶来Mにこの潤沢なインクフローを考えればよく保っていると思います。
インク残量は少々見にくいです。緑縞はまだ見やすいほうだと言いますが。
棚吊りはまったく起こっていません。インクが要因かペンが要因かははっきりしませんが、おそらくペンのおかげでしょう。これだから吸入式は好きなのです。
キャップは四条ねじになっており、一回転もせず外れます。しかし、ねじの摩擦が少ないというか、弾性変形が少ないというか、キャップを締めた時の摩擦が小さい気がします。ちょっと力が加わると勝手に緩んでしまいそうですこし怖いです。その観点ではDiamond 530が最強ですね。
キャップを後ろに嵌める際もすこし注意が必要です。強い力で押し込んでしまうとかなり外れにくくなってしまいます。これを力を入れて外すのも、なんとなく怖いです。軽い力で、ということを常に意識していなければいけません。基本的な取り扱いに少し気をつける必要があるペンですね。とはいえ、慣れれば何の問題も無くなる程度です。ストレスにはならないでしょう。
キャップをした状態では全体の長さは823よりも短いです。しかしキャップの長さはほぼ同じ。しかもバランス型とベスト型の違いがあるのでM1000のほうがキャップは長く見えます。筆記状態ではキャップのささりが浅く、かつキャップが長いため、全体でもかなりの長さとなります。軸もなかなか太い。私の手には少々太過ぎのようです。M1000で筆記をした後に823を持つと、収まりの良さに驚きます。一番慣れている軸だということもあるのでしょうが、やはり823くらいの太さが一番合っているのでしょう。
ペン先は前述の通り、PF刻印の入ったMです。ペリカンは角研ぎから丸研ぎへと移行したらしいですが、このペンはPF刻印がまだ入っている期間のものであるためか、角研ぎで研がれています。贅沢を言えば丸研ぎが良かったのですが、PF刻印と両立するものではないのかもしれません。
ペンポイントはスパっと面が出ています。しかしこの面に合う筆記角度は60~70度程です。誰がM1000でわざわざそんな角度で書きますか。
また、ペン先をルーペで見ると少々腹開き、かつ僅かな段差が見受けられます。段差は正面から見て右側のイリジウムが浮き上がっており、左ねじりに適した恰好となっています。私は右ねじりなのでマイナス要素にしかなりません。といっても僅かなものですし、M1000の柔らかさではあまり関係のないことなのかもしれません。腹開きも含めて。
インクフローはとてもよく、紙にこんもりとインクが乗ります。色彩雫の月夜を入れたのですが、このインクとPremium C.D.の組み合わせでは盛大に滲みます。まあ、これはペンが悪いわけではありません。
ペン先が柔らかいおかげで、ふにふにと変形するたびに切り割りからペン先表へインクが滲んできます。パイロットのFAでも似たような現象が起こるようです。切り割り付近を汚しますが、そこまで見た目に悪影響ではありません。
国産Mに比べるとかなり太いです。舶来Mの中でも太い方ではないでしょうか。
さて、twitterで再三再四つぶやいていたペン先柔らかさ測定実験。M1000を買ったら実験器具を買う、などとつぶやいていた覚えがありますが……あれは順当にM1000を買ったらの話です。こんな突発的な衝動買いでの話ではありません。
一応、実験結果をまとめるのにブログでは具合が悪いので、結果をまとめるWebページは作りました。Googleサイトで。Google様様です。
https://sites.google.com/site/illlorzlli/
まだ実験器具を買っていないので、当然なんの情報もありません。いつかここにいろんなペンの柔らかさをずらりと並べるのです。今の夢です。
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