2012/06/03

Pelikan Souverän M1000 M


 Pilotの初万年筆は823WA。そしてPelikanの初万年筆がM1000! なんって贅沢な。
 このM1000購入、完全に想定外の出来事です。まだ買う気はありませんでした。
 それがなぜ今こうして緑縞の軸を愛でているのか。昨今の仕様変更に端を発します。
 M1000は、というかスーベレーンは天冠が金属にサテン仕上げのものに変わってきています。樹脂天冠はもうなかなか手にはいらないのではないでしょうか。それは喜ばしい変更です。樹脂よりは金属の方が高級感があってよろしい。
 しかし、ニブのPF刻印がなくなってきているというではありませんか! M800以下のものはともかく、M1000のPF刻印は不滅だと思っていました。まさか変更が起きているとは。
 では、PF刻印の有無で柔らかさが違うのか? こればかりは調べて分かるものではありません。店頭で試し書きしてきました。
 結果、微妙に、ほんの少しだけ違う気がする、という程度の些細な違和感を覚えました。個体差と言われれば納得する程度です。そのとき、私の中に巣食う悪魔が「これは違うぞ、今買わないと確実に後悔する!」と囁いたので購入。単にM1000を買う口実が欲しかっただけであることは言うまでもありません。

 と、いうわけでPF刻印つき、金属天冠のM1000が我がペンケースへやって参りました。



 まず、M1000といえばそのニブの柔らかさが有名。柔らかいニブといえばM1000というのはもはや定説です。基本です。
さて、実際にM1000を使ってみると、なるほどこれは柔らかい。現行品しか使ったことのない私にはまさに異次元の柔らかさです。
 しかし、これは柔らかすぎるほど柔らかいかといえば否。現代の総ガチニブ状態からすれば特筆して柔らかいことは事実ですが、万年筆ユーザーの中でも筆圧が低めな人はこれでもまだ満足できないのではないでしょうか。これでも足りないとなれば……浮かぶ選択肢は、オノト……。そこまで出すお金はないので買う予定はありませんが、ヴィンテージに傾倒する人の気持ちも分かります。
 などと書きましたが、ふわふわに柔らかいことは変わりません。私にはちょうどいい具合です。無意味に紙の上でペン先をふにふにしたくなります。このくらいの柔らかさのペンが増えるといいのになぁ。





 823WAと比較してみると、弾力部の長さはほぼ同じですね。しかし地金の薄さが肉眼でわかるほどM1000のほうが薄いです。これがM1000の柔らかさを生んでいるわけですね。


 順番が前後した感もありますが、外観です。
 長い間憧れていたせいか、まさに王道の出で立ちに思えます。君主の名を冠しているだけはありますね。
 購入したのは緑軸です。M1000は黒と緑しかない、ということを知らずにM800などで緑を買い、M1000購入の段になって後悔している方をちらほらと見かけます。私のようにM1000から買うとそのような事態とは無縁です。
 黒軸を購入している人は見たことがありません。


 ペリカンの緑縞って、全体が透けているんですね。私はてっきり、黒軸やモンブランのように首軸付近のみが透けているのかと思っていました。吸入機構もうっすらと見えます。うっすらとですが。
しかしここから見えるインクタンクの小さいこと。823の軸全体がインクタンクである外見を見慣れたせいもあって、随分と小さい印象を持ってしまいます。ピストン式の限界やインク噴き出し対策ということは分かるのですが、もう少し大きくても、と思ってしまいます。とは言え、肝心の容量にはさほど不満はありません。まだ一度も使いきってはいないのですが、舶来Mにこの潤沢なインクフローを考えればよく保っていると思います。
 インク残量は少々見にくいです。緑縞はまだ見やすいほうだと言いますが。
 棚吊りはまったく起こっていません。インクが要因かペンが要因かははっきりしませんが、おそらくペンのおかげでしょう。これだから吸入式は好きなのです。
 キャップは四条ねじになっており、一回転もせず外れます。しかし、ねじの摩擦が少ないというか、弾性変形が少ないというか、キャップを締めた時の摩擦が小さい気がします。ちょっと力が加わると勝手に緩んでしまいそうですこし怖いです。その観点ではDiamond 530が最強ですね。
 キャップを後ろに嵌める際もすこし注意が必要です。強い力で押し込んでしまうとかなり外れにくくなってしまいます。これを力を入れて外すのも、なんとなく怖いです。軽い力で、ということを常に意識していなければいけません。基本的な取り扱いに少し気をつける必要があるペンですね。とはいえ、慣れれば何の問題も無くなる程度です。ストレスにはならないでしょう。


 キャップをした状態では全体の長さは823よりも短いです。しかしキャップの長さはほぼ同じ。しかもバランス型とベスト型の違いがあるのでM1000のほうがキャップは長く見えます。筆記状態ではキャップのささりが浅く、かつキャップが長いため、全体でもかなりの長さとなります。軸もなかなか太い。私の手には少々太過ぎのようです。M1000で筆記をした後に823を持つと、収まりの良さに驚きます。一番慣れている軸だということもあるのでしょうが、やはり823くらいの太さが一番合っているのでしょう。

 ペン先は前述の通り、PF刻印の入ったMです。ペリカンは角研ぎから丸研ぎへと移行したらしいですが、このペンはPF刻印がまだ入っている期間のものであるためか、角研ぎで研がれています。贅沢を言えば丸研ぎが良かったのですが、PF刻印と両立するものではないのかもしれません。




 ペンポイントはスパっと面が出ています。しかしこの面に合う筆記角度は60~70度程です。誰がM1000でわざわざそんな角度で書きますか。
 また、ペン先をルーペで見ると少々腹開き、かつ僅かな段差が見受けられます。段差は正面から見て右側のイリジウムが浮き上がっており、左ねじりに適した恰好となっています。私は右ねじりなのでマイナス要素にしかなりません。といっても僅かなものですし、M1000の柔らかさではあまり関係のないことなのかもしれません。腹開きも含めて。
 インクフローはとてもよく、紙にこんもりとインクが乗ります。色彩雫の月夜を入れたのですが、このインクとPremium C.D.の組み合わせでは盛大に滲みます。まあ、これはペンが悪いわけではありません。
 ペン先が柔らかいおかげで、ふにふにと変形するたびに切り割りからペン先表へインクが滲んできます。パイロットのFAでも似たような現象が起こるようです。切り割り付近を汚しますが、そこまで見た目に悪影響ではありません。


 国産Mに比べるとかなり太いです。舶来Mの中でも太い方ではないでしょうか。

 さて、twitterで再三再四つぶやいていたペン先柔らかさ測定実験。M1000を買ったら実験器具を買う、などとつぶやいていた覚えがありますが……あれは順当にM1000を買ったらの話です。こんな突発的な衝動買いでの話ではありません。
 一応、実験結果をまとめるのにブログでは具合が悪いので、結果をまとめるWebページは作りました。Googleサイトで。Google様様です。
https://sites.google.com/site/illlorzlli/
 まだ実験器具を買っていないので、当然なんの情報もありません。いつかここにいろんなペンの柔らかさをずらりと並べるのです。今の夢です。

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